早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

あなたは難民ですか?

ヨルダンの人口の7割はパレスチナ系。ヨルダンにいるシリア難民の数は約66万人。難民受け入れ人数世界第二位のヨルダン。難民に関連する問題はこの国では大変重要な話題です。他方、ヨルダンにいる難民は一括りに「難民」とは呼べない複雑な状況にもあります。今回は、ヨルダンにいる様々な「難民」について書きたいと思います。

まず一番多いのはパレスチナ難民。1948年の第一次中東戦争の際に逃げてきた人とその子孫がメインですが、第三次中東戦争の際の人、もともとどこに住んでいたかなどでバックグラウンドは多岐にわたります。さらに、現在の状況も、ヨルダン国籍を取得しヨルダン人と法律上は同じ人、国籍を取得していない人、難民キャンプに住んでいる人、住んでいない人、そもそも難民のステータスを持っている人(UNRWAという国連の専門機関が授与)、持っていない人と、多様に分かれ、それぞれの条件に当てはまるかどうかの理由も、例えば難民キャンプに住むかは自由ですが、自分の意思で難民キャンプに住んでいる人もいれば、家賃を払わなくて良いキャンプに、経済的理由から住まざるを得ないもいます。

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抑圧の象徴:ヒジャブ…???

中東、イスラム圏と聞いてよく想像するのがヒジャブ、両性の不平等、女性の抑圧といったイメージです。一方、そういった考えは西洋の価値観の押し付けに過ぎず、実際に中東に生きる女性はそうは思っていないという考えもよく聞きますね。実際のところ、どうなのでしょうか。ヨルダンでこの1週間見聞きしたことを踏まえ考えてみたいと思います。
↓よくあるイメージ。体が覆われるほど笑顔が消えていく被写体。
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ヨルダンなう

春学期が終わり、帰国したのちは一ヶ月ほど東京の会社でインターンシップをしていました。そして今はヨルダンの首都、アンマンに来ています。この地でこれから二ヶ月間アラビア語を勉強します。ということで、これからしばらくはヨルダンについての記事を書いていきたいと思います!今回はヨルダンの基礎知識と街の様子について。

↓ヨルダンの周辺地図。
http://livedoor.blogimg.jp/remmikki/imgs/4/a/4a87d746.gif

シリア、イラクサウジアラビアイスラエルパレスチナに囲まれた中東の国ヨルダン。とても危なそうですが、実は中東の緩衝帯として、中東国家及び欧米のどの国ともそれなりの和平を保っている数少ない国の一つです。人口は900万人ほど、その70%以上はパレスチナ系の人だと言われています。現在も、国内にいる難民の数は世界で2番目に多く、イラクやシリアからそれぞれ100万人ほど難民を受け入れていると言われています(国連の難民条約には批准していないため政府から正式に「難民」認定はされていない)。

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Yale Refugee Project

先学期に引き続き、今学期も課外活動の一つとしてYale Refugee Projectに入っていました。秋には、難民の人たちが料理を通じてお金を稼げるようなシステムを地元のNGOと協力して創るというようなことをしようとしていましたが、そのプロジェクトはNGOの事情などもあり結局頓挫してしまったので、今学期は別のNPOと別の活動をしていました。

YaleのあるNew Havenという街では、ここ数年は年に1000人程の難民を受け入れています。その難民の方々の定住を一括して支援するのがIntegrated Refugee and Immigrant Services (IRIS)というNPOで、無料の英語の授業の他、生活のためのオリエンテーション、就職先の斡旋など、難民が再定住するために必要な様々な支援を提供しています。

今学期Yale Refugee Projectでは、僕含め立候補した12人ほどで、IRISと協力して難民の方々の就職支援をしていました。具体的には、Yaleの学生2人と、就職先を探している難民一名がペアになり、週に一回一時間ほど会い、一緒に就職先を探したり申し込みをしたりするということをしました。やはりIRISでは人手が足りず、個人個人の就職活動を支援するのが難しいことから来た依頼でしたが、難民の方と就活を一緒に頑張るというのもやはりアメリカならではなのかなと思いながら活動していました。

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2年生春学期授業振り返り

今学期は最後の数日間にペーパー3枚、期末試験2つがありかなり大変でしたが、全てなんとか終了しました。ということで、毎学期恒例、振り返りをしたいと思います。

  • ANTH 460 / E&RS 531 / RSEE 365 Critical Human Rghts & Global Pstsocialism

面白さ5 教授4 大変さ4
課題はreading response3本、中間ペーパー、タームペーパー。人権という概念について、文化人類学的視点から、どのように生まれ、どのようにこの世界の共通言語になったか学び、また実際どのように現場で使われているのかについて考えました。また、ポスト社会主義にもフォーカスし、人権や市民社会といった考えが欧米でない国々ではどうなるのかについて学びました。ファイナルペーパーは日本の市民社会の特徴と難民問題での役割について書きました。文化人類学では、普通実際にどうなっているかという点に焦点を当て、哲学的な部分にはあまりフォーカスしないので、今回そこも学ぶことができとても面白かったです。人道的、人権、市民社会の活性化といったことをよく言いますが、まずその概念を理解し、各文化の中でどうその概念が変化しているかを考察することから始めなければと改めて思いました。

  • ER&M 200 Introduction To Ethnicity, Race & Migration

面白さ4 教授4 大変さ2
課題は中間(持ち帰り記述式)、ペーパー、期末(記述式)。Ethnicity, race, migrationという概念について、またそういった概念によって人がどう支配され差別され区別されているかについてのレクチャーでした。最初はアメリカの奴隷の歴史、先住民、公民権運動などメジャーすぎるようなトピックが多くあまり面白くありませんでしたが、全体として振り返ってみると、人種という概念をただ欧米の作り出した概念と否定するのではなく、それが実際どのように用いられ白人に権力を握らせ他の人種を区別しているのかを学べたと思います。また、Migrationという概念も、今までは移住した人々に注目しており、概念自体をあまり考えたことがありませんでしたが、その概念の持つ意味も人によっては異なるということを実感しました。

  • ER&M 371 / MMES 348 / PLSC 380 Development & Change in Iraq & Afganistan

面白さ5 教授5 大変さ5
課題はReading response 6枚、ファイナルペーパー。イラクアフガニスタンについて、特にアメリカの侵略以降の状況を様々な角度から学びました。一番課題の量が多く大変でした。ファイナルペーパーはタリバンとの交渉について歴史的観点と文化人類学的観点から考察しました。国を再構築するというのはどういうことなのか、政治にはどのような影響力があるのか、民主主義とは実際問題なんなのか、テロリストとはなんなのか、といったことを考えることができとても勉強になりました。特にISISとタリバンについてはかなり詳しくなったと思います。

  • FILM 453 / AFAM 401 / AMST 411 / HIST 769 Introduction to Documentary Studies

面白さ5 教授4 大変さ3
課題はエッセイ4枚、ファイナルプロジェクト。ドキュメンタリーという分野について、写真、ラジオ、動画に分け議論しました。ドキュメンタリーという者に対する視点が広がったように思います。また、セミナーの他の学生には実際にドキュメンタリー等を製作しているような人たちも多く、そういった人たちの視点を聞けたのも興味深かったです。

  • GLBL 121 Applied Quantitative Analysis

面白さ2 教授4 大変さ3
課題はproblem set7個、中間試験、期末試験。社会科学系の学問に必要最低限の統計処理についてのクラスです。中学一年生でやったな〜みたいな内容だったので油断していたら結構難しいところもあり、理系だった自分が遠い昔に思えました。

ということで、今学期はセミナー3つとレクチャー2個で、大変さ的にも内容的にもバランスのとれた構成だったかなと思います。ER&Mという専攻の中でも、少しずつより専門的になって来られたかなと思います。夏の経験を経て、また秋学期取る授業を考えていきたいです。では!