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早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。

Presidential Election 大統領選の余波@Yale

Yale アメリカ

大統領選挙、結果発表の瞬間から悲しみ、恐れ、怒り、悲鳴、励まし、ハグ、そういったもので学生が、教授が、校舎があふれています。「これでアメリカ人の半数以上がracistでsexistで偏見にあふれていることがわかってしまった」「アメリカの未来だけでなく世界の未来が心配だ」「トランプに投票した人たちはバカだ」「誰がなんと言おうと私はあなたのことを愛しているし、いつでも受け入れる」多くの人からこのような言葉を実際の会話、授業、またFacebookの投稿で聞きました。

僕も恐怖を感じています。東アジアのどの国が核を持っても気にしない、在日米軍基地への支出をストップする、日本のせいでアメリカの経済の一部は滞っている、そういった発言をしたトランプをアメリカ人が選んだということはそれだけ多くの人が日本を嫌っていてどうでも良いと思っている。最初の12時間くらいはそう思って怖かったです。今は−−もっと色々な思いが入り混じっています。Yale大学という世界は何なのか、それを一番考えています。

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上の画像は、学内の掲示板の様子です。トランプの当選によって傷ついた、マイノリティや女性を励ますために貼られたものです。他にも様々なことが学内で起きました。留学生、アジア系アメリカ人、女性、など白人男性以外のほぼ全ての団体が、「ハグをしよう、互いにはげましあおう」というようなイベントを開きました。学長、寮長、寮長秘書、など様々な方から大統領選の結果に関するコメントを記したメールが届きました。どれも結果を否定的に見ていて、「こんな結果になってしまったけど、互いに励まし合い、力を合わせてアメリカをよくしていこう。You are loved. そのことを忘れないで。」というような内容です。さらに、選挙翌日に予定されていた、ある授業の中間試験が任意になりました。経済のイントロの授業で、受講生がとても多いクラスです。学生たちからの要請により、教授が決めました。僕の知り合いにも受けている人が何人もいました。

選挙の結果に対してこういったことが起こるというのは、日本ではなかなか考えられません。しかしこれはアメリカならではのことなのでしょうか。

僕はこういうことがことが起こるのはYaleならでは、エスタブリッシュメント層が多いIvy Leagueのような大学だから、だと感じます。エスタブリッシュメントとは、「名門大学に通うお金持ちのエリート層」のことを指します。日本とは違い、学力だけでなく課外活動やエッセイなどを総合的に見て大学への合否を決めるアメリカでは、Yale, Harvardなどのいわゆる名門校は、お金持ちばかりが通っているというイメージが根強く残っています。実際は資金に関係なく合否を決め奨学金を出している訳ですが、それでもSATなどのテストでの高得点、様々な課外活動、高校で履修した授業や成績の良さ、そういったものを取るにはある程度の資金力が必要なことが多いというのも事実です。実際周りの学生を見ていると、皆パソコンを持っているし、欲しいものを買っている人が多いし、衣服にそれなりにお金をかけている人が多く、中流層以上の人が多いように感じます。

こうしたエスタブリッシュメント層や大学は世間からどう見られているか?先述した、経済の授業の中間試験が任意になったことについてこんな記事が出ました。
www.foxnews.com
Fox newsは右派、トランプ派なことで有名なことも関係しますが、かなり否定的に書かれています。また、コメントもかなり否定的で、Yaleの学生がsnowflake (雪片)と表現されていました。世間の辛さを知らない、ラッキーな子供たちが優雅に過ごしている、そんなイメージなのです。もちろんアメリカ人全体のイメージがそうであるわけではないと思います。しかしトランプに投票した白人の中間層の多くはこのようなイメージを抱いていると思います。そしてそれは先述したようにあながち間違いではありません。

headlines.yahoo.co.jp
そこでこれを読むと何となくトランプが選ばれた理由がわかるような気がします。Yale Law School出身で元大統領の妻で恵まれた生活を送ってきて、マイノリティや女性の地位に主眼を置いたクリントンは結構嫌われていたでしょう。

しかしYale大学は、少なくともこの数日間、そんな冷静な分析をできる状態にはありませんでした。僕はそれが一番怖く感じます。嘆き悲しみ怒るだけで、アメリカでアメリカ人に囲まれているのにアメリカの半数を動かした理由を考えようとしない、考えられない、そんな世界がとても狭く思えました。それなりに裕福な白人が嘆いたり泣いたりしているのを見ると、何か違うのではないか、と思ってしまいます。そして今のアメリカのメディアや政治はこういった大学の出身者で占められています。トランプが現れなかったら、誰もアメリカに起きていた問題を理解せずにいたのではないか、そう考えるとトランプが当選したのは良いことのようにも感じます。しかしそんなことはとても言い出せる状況ではありません。僕としては、結局なぜ白人の中流層がトランプを選んだのか、直接的な答えを聞きたいですが、それに応えられる人は周りにはいません。

一方で、大学外を白人の友達が隣にいない状態で出歩きたくはありません。父親が女性の価値を認めない人で母親に暴行を加えるのを日々見てきて、大学にも行かせてもらえないと思っていたが何とか合格したマイノリティに属する友達が悲しんでいるのを見ると、トランプで本当に良いのか、疑問がわきます。

今は学生も少し落ち着いてきて、笑い声が聞こえるような状態になりました。僕は何となくの疎外感、少し外の立場にいてしまう自分、というものを感じます。アメリカ人ではなく選挙に直接関わったわけではないし、アメリカの抱える問題の解決にそこまでの情熱は感じないし、生きるのが辛くなるような差別や貧困を経験したこともなく、学内の誰の心境も完全には共有できません。これは日本人の先輩に聞いたら、結構あることだそうですが、どうすることもできないものなのでしょうか。

ということで、あまり整理できていないのがよくわかる投稿となってしまいました。僕なりに近況をできるだけ客観的に書いたつもりですが、僕の視点のバイアスがかかっていると思います。Yaleにも本当に苦しみ悲しんでいる人はたくさんいるし、僕の人間関係が不十分なだけで、トランプに投票した白人の中流層もたくさんいるのかもしれません。日常が戻るまでにはまだしばらくかかりそうです。では!

↓ちなみに、Yaleの学生新聞が事前に行った調査です。いかに世間とかけ離れた世論かがわかります。
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