早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

YALEの授業振り返り〜1年生秋学期編その2

この前に引き続き、今学期履修した授業のまとめです。
RLST022 Religion and Science Fiction
面白さ:5
学べる量:5
大変さ:4
教授:5
履修者12人、週2回105分の授業が全25回ありました。Freshman Seminarという種類の授業で、一年生しか履修できないクラスです。(一年生が必ず取らなければならないという訳ではありません。)課題は3ページ前後のreading response 3枚と8-10ページのfinal paper1枚で、日々の予習は、週に本200-800ページくらいでした。教授がファシリテーターとなって議論を導き、学生たちが意見を言っていくスタイルでした。

基本週2回の授業で一冊のSFを扱い、授業内で宗教についてのレクチャーなどはグノーシス主義を扱った時以外は特になく、知らないことは各自調べてくる、という感じでした。扱った長編小説を時系列に列挙すると、A Case of Conscience (Blish, James), A Canticle for Leibowitz (Miller, Walter), Native Tongue (Elgin, Suzette), Dune (Herbert, Frank), The Divine Invasion (Dick, Philip), Parable of the Sower (Butler, Octavia)で、この他にもパキスタンヒンドゥー教徒が主人公の話、20世紀初頭にインドの女性作家が書いた話など、いくつか短編小説を読みました。さらに、映画を三本(宿題として)見ました。Dune (1984), Stalker (1979), Battlefield Earth (2000)です。
宗教的観点から見ると、最初の方はキリスト教がメインの話(舞台が教会、キリスト教的設定など)を扱い、その後イスラム教、ヒンドゥー教グノーシス主義、そして新宗教という流れでした。その中で、性差問題、オリエンタリズム、カルトなどについても扱いました。授業の最終目標は宗教とは何か、定義することです。

感想は、一言で言うととても面白かったです!もともと SFが好きだが宗教についてはほとんど何も知らないと言うのがこのセミナーを履修したいと思った理由でしたが、SFについてもあまり知らなかったことがわかりました。このセミナーでは、SF界では有名だけど。。と言うような作品や作家の本をたくさん読め、また宗教がメインテーマのSFが多く、本当に知らない世界ばかりを体験できたと思います。宗教に限らず、欧米に残るアジア圏へのオリエンタリズムや、アジアでの宗教による紛争・抗争など、知っているべきなのに知らなかったことにもたくさん気づかされました。さらに、セミナーということで他の学生の意見がとても重要になるわけですが、その学生の性別、人種、宗教、頭の良さ、なども多様性があり、さすがアメリカという感じでした。宗教を扱っている分、この多様性というのは特に重要だったのではないかと思います。

授業内容もそうですが、セミナー形式でここまで議論だけで授業が進んでいくというのも初めての経験で、そこから学べたことも多かったと思います。最初の数週間は、意見を言うのに本当に苦労して、105分の議論の中で0~1回しか発言できないことも結構ありました。キリスト教の話でよくわからない、皆が英語でキリスト教の話をするから何を言っているのかよくわからない、皆アメリカ人の中で英語で意見を言いづらい、少し聞き逃してしまったから自分の意見がその聞き逃した部分と同じかもしれない、話題になっている部分はあまり深く読んでいなかった、など色々な理由があります。どれも自分自身で何とかしないと解決しない問題です。教授に授業で理解できなかったところを聞きに言ったり、本を読む時のメモの取り方を変えて見たり、事前に課題以上に調べて言ったり、議論になりそうなテーマを予想しておいたり、他の学生と話してどう思ってるか聞いて見たり、色々頑張りました。その結果、一回の授業で10回以上は意見を言えるようになった…訳ではありません。多くて5回くらいだと思います。しかし、議論の内容は毎回理解でき、意見を言いたいと思う場面が増え、発言が一番多い方ではないにしても、授業により参加できるようになりました。

このセミナーで扱った本はどれも面白いのでオススメです!このセミナーは教授も学生も優しくて、英語が母語ではない僕を若干気遣ってくれたような印象でしたが、毎回こうとは限りません。より競争の激しいようなセミナー(Yaleにあるかはわかりませんが)でも存在感を出せるようにするのが次の目標かなと思います。