早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。

盧溝橋ー愛国教育の中心地ー

日中戦争は、北京郊外にある盧溝橋付近での、演習中の日本軍と中国軍間の戦闘により勃発しました。盧溝橋はもともと北京の最遠部で、他地方に向かう旅人が別れを惜しむ場所であったとともに、観月の名所としても知られていました。現在は、盧溝橋が現存するとともに、付近に愛国教育の中心地とされる抗日戦争記念館があります。先日そこに行ってきました。

↓盧溝橋。獅子の石像がたくさん並んでいて可愛いです。日の加減によって綺麗になります。盧溝橋事件は盧溝橋の上で起きたわけではありません。
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↓抗日戦争記念館。小学生、高校生、家族連れなど、多くの人で賑わっていました。
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抗日戦争記念館では、基本趣旨として、日本をはじめとするファシズムの中国侵略に共産党を中心として、世界の中でも中国が中心となって勝利した、という主張がなされ、展示は日清戦争のあたりから時系列になっています。日清戦争を含め日本との戦争を全て日本の中国への侵略としている点や、共産党の活躍をアピールしている点、最終的に中国が勝利したとしている点は予想でき、他の博物館でも見ていました。

その中で一番衝撃が大きかった展示は、日本の残虐行為というコーナーでした。このコーナーには、南京大虐殺をはじめとする、日本兵による中国人への残虐行為の実際の写真や拷問道具が展示されていました。写真は子供の死体、捕虜の首を切ろうと刀を振りかざした日本兵とそれを笑顔で見ている日本兵、晒し首、血に染まった刀を磨く日本兵などがあり、拷問道具は鉄の円筒型の格子で内部に向かって幾千もの釘が出ているというものでした(捕虜を入れ横向きにして転がすのだと思われます。)写真等が本物かどうかという議論はまたあるのかもしれませんが、それにしても残虐性には衝撃が大きかったです。歴史の授業等で日本軍が中国人を殺した、中国と戦争をしていた、と言った事実は学習し、また例えば南京大虐殺について教科書の記述はどのような過程で現在の形になり、それに対しどのような議論があるのかと言ったことも筑駒で勉強していました。しかし、実際に行われた行為については深く考えたことがありませんでした。

日本では靖国神社にある博物館や、広島の原爆資料館などで、戦争やアメリカが日本、日本人にした行為については具体的にわかります。しかし、日本が他国に具体的に何をしたのか、なかなかわからないのではないかと思います。

愛国教育として、北京の生徒は多くがこの記念館に行くのだと思います。それでもなお日本のアニメやドラマが好きという人がたくさんいるのも興味深いです。中国人にこのことについて尋ねると、戦争は昔のことだから、という答えが返ってきます。この答えは確かにその通りで、今生きている日本人と当時の日本人は異なる人物で、そもそも国という概念でくくって好き嫌いなどを決めるのは考えが狭いのかもしれません。しかし一方で、一つの国には、少なくとも近代以降共通して流れる価値観や文化というものがあるのではないかという気もします。日本に生まれ、他の国に移住して国籍を変更するなどの行為をせず日本人であり続けることを選んでいる我々日本人は、戦争当時の日本人の少なくとも一部を認めていることになるのでしょうか。これが他の国、例えばアメリカではどうでしょうか。

残虐性を人間という種の性質として片付けることもでき、実際ウルトラマンを見て育った僕はそのように考えてきました。しかし、その考えはこの現実世界ではあまり役に立たないと思います。もう一歩具体化した思考を持ちたいと思った土曜日でした。では!