早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。

アメリカ警察のパトカーに乗りました

日本でも警官と話したことなどほぼなかったのですが、この度アメリカ警察に4時間程お世話になってきました。
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とは言っても、犯罪を犯して捕まったわけではありません!!今学期履修している警察についての授業(Ethnography of Policing and Race)の一環として、地元の警察のパトカーに乗せてもらう(ride along)というフィールドワークをしてきたのです!アメリカでは書類を出せば誰でもできるものなのか、教授が元警察官でコネクションがあるからなのかはわかりませんが、この授業では学生全員一人一人が数回のパトカー乗車体験をし、それを元にペーパーを書くというのが最終的な課題です。乗車体験は、警察官の実際のパトロールシフトに同行するというもので、パトカーで街を巡回したり、交通事故現場に呼ばれて行ったり、DVの通報を受けて現場に行ったり、警察官専用の休憩所のようなところで同僚の人と話したりしました。一般人には公開できない秘密の多い組織というイメージの警察でしたが、行方を追っている犯人の個人情報から警察のネットワークシステム、現場への同行等起きていること全てをそのまま見せてくれ、驚きとともに面白い経験でした。授業で読んでいる文献と今回の観察を元に、特に印象に残っていることをQ&A形式で書いていきたいと思います。

Q1 警察官って、どんな仕事?毎日何してるの?

警察の中にもいくつか部署があり、事件を捜査する刑事部門、街をパトカーでパトロールする部門、街を歩いてパトロールする部門などがありますが、僕が同行したのはパトカーでパトロールする部門に属する人でした。彼は毎日8時間パトカーで街をパトロールし、事件や事故の通報を受けると現場に急行します。こう行った事件や事故は一日あたり4個程担当するようで、事後は報告書を書く必要があります。僕が同行した際にも、その日の午前中にあったDV容疑の事件についての報告書を書いており、結構面倒くさそうでした。パトカーの中にパソコンが設置されており、それを使用して専用のネットワークに容疑者の情報を打ち込んだり、Wordでいつどこで何があり何をしてどうなったという報告書を書いて上司の確認を得たりしていました。

報告書を書いている間にも事故や事件は起こるので、本部から無線で指示を受けると現場に急行します。パトカーには1人で乗りますが、現場では同じ地域担当の同僚と一緒に行動することが多いようで、僕が同行している最中にも、「上の階の住人がDVしている音がする」という通報を受けそのアパートに急行し、同僚とともに疑いのある住人の部屋に行き簡単な事情徴収をしていました。(結果思い違いである可能性が高いということで何もせず去りました)。

街には数カ所警察官専用の小さな建物があり、安全なスペースとして休憩したりご飯を食べたり同僚と話したりできます。ということで、8時間のシフトの中で何もない時はパトロールしたりこのスペースで休憩したりし、何かあると急行、処理して報告書を作成というのが毎日の仕事なのです。パトカーには基本1人で乗るため、必然的に1人で過ごす時間は長くなります。無線は常にOnですが、何もないと30分〜1時間無音状態です。その状態で犯罪や異変に目を光らせるのは中々ストレスのかかることなのではと感じました。その分、たまにすれ違ったり現場で遭遇したり休憩室で会ったりする同僚との会話が唯一の憩いの時間という感じでした。

Q2 警察の仕事をしていて、何が楽しい?何がやりがい?
上記の結論から、結構大変な仕事なのだとわかりましたが、なぜそれでも警察官を続けるのでしょうか。警察官をしていて良いことを聞いたところ、僕が同行した人は「自由なところ」と言っていました。これは彼の言動を見ていても事実なのだと思います。「自由」とは、言い換えれば裁量権が自分にあるということです。警察という組織の中でも、住民との関わりという点でも、この裁量権はかなり発揮されているように感じました。組織の中では、無線で指示を受ければ急行しなければならず、事件に関われば報告書を書かなければなりませんが、それ以外のシフトをどう過ごすかは彼の自由です。休憩所で休んでいても、パトカーを漠然と走らせていても、車や歩行者を止めまくって麻薬やアルコールのチェックをしても良いため、自由度は高いと言えるでしょう。実際、僕が同行した最後の1時間くらいは、「普段はもっと車とかたくさん止めてチェックするけど、今日は色々あって疲れたからしなくていいや」と言ってパトカーを走らせるだけという選択をしていました。

警察官は、住民を取り締まるという権力構造により生まれる自由度も高いように感じます。僕を同行させてくれた警察官は運転する際シートベルトはしないし、スマホはいじるし、信号は無視するしでした。さらには、警察のネットワークシステムを使えば前を走っている車のナンバーから運転者の個人情報もわかります。「自分は法を犯しても(小さなことなら)許される」「しかし一般人には法を行使することができる」という、警察組織の一員として自分の持つ権力、裁量権を簡単に感じられることにやりがいを感じ、また感じることのできる行動をしているように見受けられました。

警察に取り締まられる側の立場としては、警察官のその日の気分で取り締まられるかが決まり(何か法に触れることをしていればの話ですが)、それによって人生が変わってしまう可能性もあるというのは少し怖い話ですね。

Q3 警察特有の文化は存在する?
文化とは、あるコミュニティの中で暗黙のうちに共有されているルールや考え方ですが、警察にも特有の文化はあるのでしょうか?僕が同行した警察官と彼の同僚との会話を聞いていると、そういった文化を強く感じました。まず気づくのは、彼が同僚と話す時急に言葉遣いが荒くなる点です。僕には丁寧な言葉で会話してくれますが、同僚とはf...やshitを連発して会話していました。警察官たるもの男らしく、荒々しくあるべきというようなイメージが共有されているのかなと思います。(Yale生であっても、女の子であっても言葉遣いが荒い人はたくさんいるので、単純に仲間であることを伝えるためという可能性もあります)。

また、「報告書を書くのは面倒」「パトロールシフトは疲れる、好きじゃない」といった、仕事の何が好きで何が嫌いというのにも正解の答えがあり、本心がどうであれ同僚とは正解の受け答えをするという慣習も見受けられました。これはどのコミュニティでもありますね。例えばYaleでも、理想の教授、授業像というものがあり、それに合わない教授や授業に対しては、例え個人的には好きでも文句を言い合うというようなことがよくあります。(僕の理想像と違うことが多いので返答に困ります)。

ということで、1回目の乗車体験では基本的なところを観察してきたという感じです。今後は、警察による人種差別、暴力などよりセンシティブなトピックについても聞いたり観察したりできたらと思います。では!