早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

卒業論文の書き方

4年生ということで、専攻を修了するためには卒業論文を3月までに提出する必要があります。僕の専攻、Ethnicity, Race, and Migrationではいくつかオプションがあり、卒論を書かないオプションもあるのですが、僕は「一年かけて卒論を書く」という選択をしました。今年の夏にタイと日本にて行ったフィールドワーク、インタビューを元に、最終的には45-60ページの論文を書きます。秋学期には「卒業論文の書き方」というようなセミナーが僕の専攻の授業でオファーされており、今はその授業の中でどのような手順で研究を形にし、執筆していくかということを学びながら実際に書き始めています。予定としては今学期中にLiterature Review (先行研究の分析)のパートを書き終わり、来学期残りの部分を書くという感じです。今回は、卒業論文をどう書いていくのか、そのプロセスについて紹介したいと思います。

それでは、フィールドワークなど、データを集める研究パートを既に行ったとして、それを論文にする作業を順番に見ていきましょう。
1. 研究のテーマ、疑問、重要性を明確にする
研究を通じて得た感触は、研究開始前の仮説や予想とは異なることが多々あります。また、思い通りのデータを得られなかったり、逆に予想していなかったデータを得られたりということもあります。この辺りも含め、まずはもう一度研究のテーマ、研究が答えようとしている疑問、そしてその研究の重要性を言語化し、明確にします。特に大事なのはSo what?に答えること、つまりなぜその研究をする必要があるのかを考えることです。この部分がなければ、読者はその論文を読もうとは思いません。テーマや理由を考えるためのエクササイズとしては、I am working on ... because I want to find out ... so that I can help others understand ... (自分のテーマは…で、…を解き明かしたく、それによって他の人が…を理解する手助けをしたい)の空欄を埋めることを考えます。

2. 文献目録(annotated bibliography)を作成する
研究開始時にもおそらく作成していますが、フィールドワークで得たデータ(一次データ)も鑑み、もう一度先行研究や関連する学問の論文(二次データ)を探し、Wordなどでリストにします。論文の検索には大学の図書館が契約している論文サーチエンジンやWeb of Science, Google Scholarなどの無料検索ツールを利用します。さらに、各文献についてその内容、主張、卒論にどのように使えるかを3-5文くらいで書いておきます。ちなみに、Zoteroという無料でダウンロードできるソフトウェアを使うと、各文献の情報をウェブサイトから抜き取り管理してくれます。

3. 二次データを読むとともに一次データの分析をする
研究テーマに関連する先行研究や仮説、法則に関する論文を読んでいると、共通する主張や逆に今まで触れられてきていない部分が見えてきます。こういった部分と自分の持つインタビュー等の一次データがどう関係するのかを考え、まずは一次データの一部に絞り、分析及び主張を書いてみます。(4ページくらい)。すると、卒論全体として主張したいことも見えてきます。

4. アウトラインを作成する
先行研究、研究方法、分析など各項目についてセクション名、セクションのまとめ一文、その理由、その証拠を書き出していきます。単語ではなく、文章で書いていくというのがポイントです。

5. イントロダクションパートを書いてみる
イントロダクションでは先行研究などテーマに関するコンテクスト、研究が答えようとする疑問、その疑問に答えることで得られること(先行研究では触れられていない可能性を探る、今までの仮説に対するさらなる証拠となる等)、その疑問に答えることの重要性(なぜ先行研究では触れられていないにも関わらず考える必要があるのか、なぜ仮説に対しさらなる証拠を提示する必要があるのか等)を書きます。研究結果の分析パートを書いていない段階ではまだ完璧には書けませんが、頭の中を整理することができます。

6. 他のパートを書く
筆が進まなくなったら他のセクションをやるなどすると進むようです。

ということで、手順を書いてみました。また論文が書けてきたら僕の研究の内容についても書きたいと思います!