早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

Ethnicity, Race and Migration専攻

僕の専攻、Ethnicity, Race, and Migration(以下ER&M)ですが、何それ?と思う方も多いかなと思い、今更ですが専攻についてその内容、卒業に必要な単位について等紹介したいと思います。

ER&Mはイェールで1999年に設立された学部生のための専攻で、今では毎年30-50人くらいがこの専攻で卒業します。日本では○○学部△△学科という形が多いかもしれませんが、イェールでは学部(department)と○○専攻(major)は一致しているわけではありません。学部(department)は大学院生用のプログラムを有しているもの(political science, anthropology, math,...)を差し、教授の任命権など、権限が大きいのに対し、ER&Mはプログラム(program)という位置づけで、権限があまり大きくはありません。しかし、学部生の専攻としてはdepartmentであろうとprogramであろうと同等の専攻(major)です。

このER&Mという名前はイェールに特有のものですが、アメリカ全体としてはEthnic Studiesという学術的分野に相当します。(日本語の民俗学とは意味合いが異なります。)元々は1960年代、大学に進学した黒人たちが白人の教授による欧米至上主義の授業しかない状況に異議を唱え、自分たちのルーツを自分たちの人種の視点で学べるような環境を作るよう大学側に働きかけ、それが各地に広まったことがきっかけで誕生しました。

何を研究する学問分野かというと、一言で言えば人種(race)が関連する社会の事象です。しかし、特にアメリカでは歴史的にも現代でも全ての社会的事象は人種が関連していると言っても過言ではないので、言い換えると「社会における様々な問題を人種を含めた様々な観点から学際的に分析し解決のための行動に結びつける学問」と言えると思います。

このER&M専攻で卒業するためには何が必要なのでしょうか。まず、ER&Mとして登録されている授業を合計12個以上とる必要があります。Yaleの学部を卒業するためには4年間で合計36単位(普通1授業1単位)なので、1/3にあたります。言い換えれば、2/3は専攻に関係なく好きな授業をとって良いということです。また、ER&Mの授業は社会学文化人類学政治学、経済学など色々な他専攻と同時に登録されていることが多いので、専攻の授業であっても多分野の授業をとっていることにもなる場合が多く、色々なアプローチを勉強することができます。

この12個の中には、2つの必修(イントロ的なレクチャーとそれを掘り下げるセミナー)、4年生で卒論を書く分の授業・単位2個が含まれており、残りの8単位は自由です。この中でも、2単位分はER&Mとして登録されていないものでもEthnicity, race, migrationに関連している授業ならば含めて良いです。

例えば、僕が取ってきたER&Mとして登録されている授業としては、アメリカのイスラムイラクアフガニスタンの変化と発展、警察のエスノグラフィ、人種と資本主義などがあり、ER&Mとして登録されていないものの12個の中に含める予定のものとしては日本のマイノリティ(文化人類学)と東南アジアの政治と文化(文化人類学)を考えています。

ということで、ER&M専攻について書いてみました。授業内容を見てもかなり多岐に渡ることがわかるのではないでしょうか。色々な方面の授業を取ることができ面白い一方、基礎から積み上げて言って段々レベルアップしていくというタイプの学び方ではないので、自分の学び、成長が見えにくい専攻でもあります。もう一つの問題点は、授業の多くがアメリカに関連する題材を中心にしているという点です。僕はそこまでアメリカには興味がないので、アメリカに関連しないものをより選んではいますが、その候補が限られてしまっている点は少し残念です。とは言え、タイから日本への移民をテーマに卒業研究を行い、論文を書けるまでになったのはこの専攻で色々な授業を取ることができたからだと思います!