スーパーヒーローは宗教か?
最近の宗教&SFのセミナーのテーマは新宗教です。1930-1990年くらいに生まれた、特にSF小説や映画が発端の新しい宗教について、その元となった作品を読み、宗教とは何か、新宗教の特徴とは、カルトとの違いは、などについて議論しました。
授業で主に扱った宗教は、Church of All Worlds, Earthseed, Scientologyです。最初の二つは、SF小説が元になっており、小説の中で主人公が新宗教を立ち上げます。それを読んで本当に宗教にしたくなった人たちが立ち上げました。最後のサイエントロジーは、創始者が宗教観を反映させたSFを書き、信者が買ってベストセラーになりました。それが映画化された、史上最悪と言われているBattlefield Earthという作品を見ました。確かにご都合主義がすごく、色々意味不明な映画でしたが、サイエントロジーについて調べてみると色々理解できるシーンもあり面白かったです。
そして、前回の授業は、各自授業で扱わなかった新宗教を調べてきて共有しよう、というものでした。コピーアンドペーストを信仰するKopimismやシュレック(アメリカの人気キャラクター)を信仰する宗教などがあり面白かったです。その中で、僕はアメリカのスーパーヒーローが宗教になるかについて調べていきました。授業の課題図書に、スーパーヒーローと新宗教には類似点が多くあると書いてあり、興味を持ったからです。授業では、4人ずつくらいの小さな班に分かれ、その中で各自の宗教を共有し、一番面白いものを全体で発表、という形だったのですが、僕の班では皆スーパーヒーローが一番面白いと言ってくれ、班としてスーパーヒーローを発表することになったので嬉しかったです!そうと決まると、班の他の人たちがすぐにこういう考えもあるよね、と意見を言い出して、さすがだなと思いました。
ということで、アメリカのスーパーヒーローと宗教の関係について書いてみたいと思います!
まずは、スーパーヒーローと宗教、特に新宗教との類似点を考えてみます。ここでスーパーヒーローとは、アメリカのキャラクター、スーパーマン、バットマン、スパイダーマン、キャプテン・アメリカ、X-メン、アイアンマン、グリーンランタン、ファンタスティックフォー、ウォッチメンなどを指します。宗教の定義は難しいのですが、ここでは宗教がよく持つ特徴、神など人知を超えた存在を信じる、経典など背景に何かしら物語がある、信仰のため祈りや協会に行くなどの行為を伴う、何かその宗教を象徴し信仰や救済に重要となるシンボルがある、などを考えてみたいと思います。
サイエントロジーなど、新宗教の多くは、人間には無限の可能性がある、入信して頑張ればスーパーパワーを手に入れられる、自分を高めることを目的としている、などの特徴があり、ポストモダンの個人化した社会の中で伝統的なキリスト教などに救いを見出せなくなった人々が入信しました。また、東洋の仏教文化を教義に取り入れたものが多いのも特徴です。例えば、上記のEarthseedは、神とはchangeである。と主張します。これは仏教の影響です。他にも、多神教であったり、瞑想を重視していたり、東洋の文化を一部取り入れるのが新宗教の流行りでした。
さて、新たな力を手に入れ、それを苦しみながらも自分を高め成長し、正義のために使いこなすスーパーヒーローの姿は、自己の変化を目指す新宗教の信者にとって目標となる、理想の存在であったと言えます。また、スーパーヒーローの物語が作り出してきた正義の規範やスーパーヒーローが誕生する瞬間の劇的な物語(両親を殺され洞穴に落ちてコウモリに襲われ覚醒するなど)などは、宗教でいう経典になりえます。スーパーヒーローの多くは自身を象徴するシンボルを持っています(S、コウモリの形、ケープ、盾、ニコニコマークなど)。
一方で、スーパーヒーローと新宗教の大きな違いは、東洋の文化が取り入れられているかどうかという点だと思います。アメリカのスーパーヒーローは、基本アメリカ人で、アメリカのために戦います。ベトナム戦争でアメリカ軍として戦ったり、ソ連からアメリカに向けて打ち上げられたミサイルを身を呈して破壊したりします。これは、光の国から地球のために来たウルトラマンや、世界各地に支部があるショッカーと戦い、南米にも出向いたりする仮面ライダーとは大きく異なる、アメリカのヒーローならではの特徴だと思います。また、戦い方もあまり東洋のカンフーなどをメインにはしません。
このように、スーパーヒーローがアメリカで新宗教となる要素は、東洋の影響を除けば結構揃っています。
実際はどうなのでしょうか?本当にスーパーヒーローを信仰する宗教団体は見つけられませんでした。しかし、スーパーヒーローが宗教にとって代わっている、という主張は結構あります。何か困ったことや悩みがあるときに、今の人は教会に行くのではなくスーパーヒーローの映画を見に行く、というような主張です。実際に自分は特定の宗教に属していると考える人は年々少なっているのでありえなくはないのではと思います。映画館を新たな教会と考えれば、月に何度かスーパーヒーローの映画を見に行く人は信者のようなものです。
一方で、最近スーパーヒーローが今まで築いて来た正義の規範を崩すような作品が多いのも気になります。例えば、バットマンvsスーパーマン、Civil War、デッドプール、スーサイド・スクワッドなど、ヒーロー同士で戦わせたり、悪役をヒーローにしたりという映画が今年はたくさんありました。また、近年中には初めて黒人がスパイダーマンになったり、ムスリムのヒーローが描かれたり、するなど、新たな試みも出始めています。アメリカは今スーパーヒーローの新たな岐路に直面していると考えられます。
というようなことを考えられた授業だったのでとても楽しかったです!では!