早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

あなたは難民ですか?

ヨルダンの人口の7割はパレスチナ系。ヨルダンにいるシリア難民の数は約66万人。難民受け入れ人数世界第二位のヨルダン。難民に関連する問題はこの国では大変重要な話題です。他方、ヨルダンにいる難民は一括りに「難民」とは呼べない複雑な状況にもあります。今回は、ヨルダンにいる様々な「難民」について書きたいと思います。

まず一番多いのはパレスチナ難民。1948年の第一次中東戦争の際に逃げてきた人とその子孫がメインですが、第三次中東戦争の際の人、もともとどこに住んでいたかなどでバックグラウンドは多岐にわたります。さらに、現在の状況も、ヨルダン国籍を取得しヨルダン人と法律上は同じ人、国籍を取得していない人、難民キャンプに住んでいる人、住んでいない人、そもそも難民のステータスを持っている人(UNRWAという国連の専門機関が授与)、持っていない人と、多様に分かれ、それぞれの条件に当てはまるかどうかの理由も、例えば難民キャンプに住むかは自由ですが、自分の意思で難民キャンプに住んでいる人もいれば、家賃を払わなくて良いキャンプに、経済的理由から住まざるを得ないもいます。

次に多いのはシリア難民。2011年から始まったシリア内戦から避難してきた人々です。パレスチナ以外の難民認定に関しては、1951年の難民条約に則るものですが、中東の多くの国同様ヨルダンはこの条約に批准していません。なので、国としては公式には外国人は全て「ゲスト」という扱いになります。ただ、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)はヨルダンにも存在し、難民認定を行ったり支援をしたりしています。ヨルダン政府がUNHCRの認定した難民を強制送還しないと約束していること、またアラブの国ならではのホスピタリティとしてもともと他アラブ国の人々へのサービスが充実していることから、難民条約無しに難民受け入れをしているというこの状況が成り立っています。

その次には、イラク難民がいます。2000年代前半のアメリカのイラク侵攻、その後の混乱、ISISの台頭などから逃げてきた人々です。シリア難民やイラク難民に関しては、難民として来ている人は基本的に難民キャンプに住まなければならないということです。しかし、ヨルダンにいる難民のうちキャンプに住んでいるのは約20%。つまり、他の人々は難民性はあっても「移民」として来て、ローカルコミュニティの中に住んでいるということになります。また、イラクからきた人々は、特に始めの頃は移り住める経済力のある高所得者層が多く、イラク難民にはお金持ちが多いというイメージがあるのも特徴的です。

このように、難民と言っても色々と状況が違いますが、ルーズなコンセプトとして難民を捉えると、やはり日本やアメリカとは比べ物にならないレベルに難民は存在し、例えば僕の周りでも、ローカルルームメート(26歳)はパレスチナ系で難民キャンプの近くのエリアに3世帯で住んでいたり、ラングエージパートナー(大学生)はパレスチナ系で、18歳まではキャンプに住んでいたがその後家族で外に出て暮らしていたり、Uberの運転手の人にも結構パレスチナ系の人がいたり、割と良いレストランにいたら明らかにイラク系の家族が来たりなど、「難民」と交流する機会はたくさんあります。一方で、一口に「難民支援」「難民問題の解決」などとはいえない複雑性も明らかです。

先日はラングエージパートナーと彼女が元住んでいた難民キャンプに行ったり、ルームメートの家に招待してもらったりして来ましたが、そこでも色々と考えさせられることは多かったです。その話はまた次の機会に!