早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

”リベラル・アーツ”教育の実態

最近話題のリベラルアーツ教育。日本の大学でも取り入れるところが増えて来ています。アメリカの大学といえばリベラルアーツ教育というイメージがありますが、具体的にはどのような点がリベラル・アーツなのでしょうか。もちろん授業以外の面でもこのリベラルアーツの特徴はあると思いますが、今回はYale大学の授業履修のシステムを例にリベラルアーツについて考えてみたいと思います。

Yaleはアメリカの大学の中でもかなり自由に授業が取れる大学だと思いますが、緩い履修条件がリベラルアーツ性を保っています。具体的には、"Distributional Requirements"と呼ばれる要求です。
↓このチャートが要求の全てを説明していますが、もう少し詳しくみてみましょう。
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Distributional Requirementsは、Area RequirementsとSkills Requirementsに分かれ、さらにAreaの方はHumanities and Arts (HU), Sciences (SC), Social Sciences (SO)の3つに、Skillsの方はForeign Language (L), Quantitative Reasoning (QR), Writing (WR)の3つに分かれています。最終的には、この合計6つのカテゴリーからそれぞれ少なくとも二つのクラスを取っていることが卒業条件になります。。。。文章にすると複雑で束縛度が高いように思えるかもしれませんが、、具体的に、僕が今学期履修しているクラスを例にすると、、
↓左側のそれぞれのクラスの欄に、薄くHU, SO, WRなど書いてあるのがわかるでしょうか?
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このように、各クラス内容によって、6つのリクアイアメントの内何を満たすかが決まっています。例えば、図の上から二番目のIntro to Ethnicity race & migrationは、人文科学及び社会学に関係する内容で、そういったことについて学ぶことのできるクラスなので、HuとSoのリクアイアメントを満たします。上から3つ目のイラクアフガニスタンについてのセミナーは、社会学に関係する内容で、さらにペーパーやエッセイ課題が多く学術的なWrtingについても学べるので、エリア的にはSo、スキル的にはWrが満たせます。一番下のAnalysisの授業は、学術的エリアというよりは統計処理について学ぶので、スキルの一つであるQrを満たします。

このように、各クラスによって、一つまたは複数のリクアイアメントを満たせ、その満たせる候補の中から一つ選びます。例えば僕の場合では、Intro
to Ethnicity...ではSoを満たし、イラクアフガニスタンのセミナーではWrを満たすことに、AnalysisではQrを満たすことにするつもりです。

細かく言うと、各学年に進学する段階で6つの内どのリクアイアメントを何個満たしている必要があると言うのは、例えば3年生までに各6つのリクアイアメントそれぞれ1つは満たしていなければならない、と言うふうに決まっています。

このDistributional Requirementのシステム、リベラルアーツでしょうか?このシステムがあることによって、学生は四年間物理の授業のみを取る、ペーパーを書くのは苦手だからペーパーのない授業だけを取る、といったことができなくなります (そのようにするとHuやWrのリクアイアメントを満たせないため)。一方で、全く興味のない分野をたくさん取らなければならない、と言うわけでもありません。必修に指定されている具体的な授業は全くなく、各リクアイアメントを満たす授業は毎学期大量にあるからです。さらに、4年間全体での要求ではなく、毎学年少しずつ要求が増えていくシステムなので、毎年バランスよく、特に1~2年生の頃様々な授業を取ることができます。例えば、いくら入学前から物理専攻を決めていて、文系には全く興味がなかったとしても、毎学期2000以上ある候補の中から2つくらいは面白そうなHuやSoのクラスはあるだろうと思います。また、最初専攻が全くわからず入学した人にとってもつまり、YaleのDistributional Requirementシステムは、かなり緩く、学生が様々な学問分野やスキルに触れながらも、興味を持っている学問に集中もできるようになっていると言えます。

僕の場合は、一年生の時から色々な分野の授業を取っていたので、もう4年生までのDistributional Requirementをほぼ全て満たしています(残すはSc1つのみ)。なので、あとは専攻の要求を満たせば卒業できます。最初から色々な分野の授業を取るつもりでいたので、特にDistributional Requirementに縛られたり、恩恵を受けたり、という経験はあまりありませんが、周りからは、Scが足りないから〜を取ったら面白かった、Huが必要だから〜取ろうと思う、やばいSoが足りないどうしよう、と言った声がよく聞こえてくるので、このシステムはリベラルアーツ教育を形作る環境の一つとして良い影響を与えているのではないかなと思います。また、他の米国大学の様子を聞いていると、全学生が受けなければならない特定の必修教科があるというところも多く、Yaleではそこまで厳しくないので、それもまた僕にとっては嬉しいところです。このシステムについてより詳しく知りたい方はこちらのサイトをご覧ください。では!