早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

筑駒の授業とは?

今回は僕の母校筑駒について書いてみたいと思います。筑波大学附属駒場中・高等学校は中高一貫の男子校で、中学は一学年120人、高校は160人、一クラス40人となっています。筑駒の特徴はたくさんあります。男子校、校則がほぼない自由な校風、文化祭や音楽祭など行事への熱がすごい、田圃を所持しており稲作の授業がある、男子しかいない、文化祭のミスコンテストのクオリティが高い、などです。この辺りのことはニュースや雑誌などでも良く取り上げられていると思うので、今回は筑駒の授業についてをテーマにします。いかに筑駒で受けた教育がためになるものだったか、Yaleで授業を受けて初めて気がついたことも多いので、その辺りのことも書けたらと思います。
↓筑駒の正門。8:30一限開始だったので、8:31分くらいに通ることが多かったです。
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2016年度の東大合格者は82名。理科三類は12名。理科三類以外の医学部への進学者は15名(全て現役のみの数値)。こう聞くと筑駒の授業は、大学入試のための勉強を中高一貫の特性を生かして先取りでするものだと言う気がしてきます。しかし実際は全く違います。逆に高三の最後まで受験に役立つことは全く扱ってくれなくて、困ってしまう授業ばかりでした。
各先生によって授業内容は全く異なりますが、僕が習った先生方の授業内容は、例えば。。数学では中学1年生の最初に合同式を扱ったり、三平方の定理の証明をひたすらたくさん考えたり、積分を使わずにグラフの面積を求めたり、微分を使えば簡単な問題を微分を使わずに解く方法を考えたり。国語ではいろは歌をまず習い、平家物語の登場人物の行動を巡って討論したり、漢詩を自分で詠めるようになるくらい勉強したり。古文の活用を習ったのは高校2年生の時でした。生物では大学で出てきた統計処理を中学一年生でやっており、地理では葉っぱビジネスについてやったり、北朝鮮に先生が行った際のビデオを見ながら朝鮮について学んだり、イスラム教についてだったり、日本の領土問題について日本側と相手国側に分担を決めてそれぞれ主張を調べてきて討論したり。化学で赤外分光光度計という普通高校にはない測定器具を使用して実験を行うかと思えば無機化学についての授業は高校3年生のラスト数回だけで終わったり。音楽ではギリシャ神話を習い英語では中学3年生でキング牧師の演説を一学期間かけて扱い。。

思い返すとこのような調子でたくさん普通ではないことがでてきます。現代文以外で教科書を使用したことは、6年間で本当に数えるほどしかありません。学校に在籍しているときは、ただ各先生が好きなこと、自分が教えたい面白いことを授業しているのだろうという風に思っていました。それにもし仮に教科書通りの受験勉強的な授業をしたら誰も聞こうとしないだろう、とも思いました。

その考察は今も変わりませんが、今考えると、先生方は自分が好きかどうかだけではなく、生徒のこともきちんと考えて授業内容を決めてくださっていたのではないかと感じています。それは、Yaleで4ヶ月過ごし周囲の人々と話したり授業を受けたりする中で筑駒で学習したことが役立っていることを痛感したからです。宗教のセミナーでアメリカの新宗教についてやった際、高三の倫理でセンター対策は全くなく戦後の日本社会の個人化とオウム真理教についてすごく深く習ったことを思い出し、アメリカと比較すると何が違うのか考えられたり、中国人と歴史教育について話したとき高二の日本史で暗黒史観や歴史教科書問題について扱ったことを思い出したり、宇宙物理で出てきて他の人が苦労していた考え方を中一の生物で習ったから余裕だなと思ったり、イスラエルパレスチナ問題に取り組んでいる人とお話しする機会を得たときに高1の世界史でユダヤ人の歴史について現代まで全ての期間で扱い近年のパレスチナへの空爆のドキュメンタリーや自爆テロをする若者を主人公にした映画を見たことを思い出し自分の意見を言い、それに対する返答を聞けたり。

筑駒の授業はどちらかというと日本の大学よりアメリカの大学の教養の授業に近かったのだと思いました。僕はたまに睡魔に勝てないこともありましたがクラスの中ではかなり真面目に聞いている方でした。それでも、もっと一言一句聞き逃さず聞いておけば、、と感じています。ちなみに、学校ではしてくれない受験勉強をどのようにするかというと、多くの生徒の場合塾に行きます。

アメリカに戻る前に今一度中高のノートを見直そうと思います。では!