早坂有生のYALE

2016年にYale(イェール、エール)大学に学部生として入学した日本人、早坂有生のブログです。大学での出来事やアメリカ大学出願のことなどについて書いていきます。ご質問、ご要望、ご連絡は記事へのコメント(非公開設定です)にお願いします。

4年生秋学期授業振り返り

最後の一年の前半が終わりました。今学期は久しぶりに筆記テストのある授業を受けると同時に、卒論も書き始め、12-15ページのファイナルペーパーも3枚あるラスト1週間でした。一年生の最初の頃は3ページのリーディングレスポンスに1週間かかっていたと思うと、4年生になったのかなと思います。振り返っていきたいと思います。

1. ANTH 300 Primate Behavior and Ecology
霊長類についてのレクチャースタイルの授業で、仮説を立て予想し実証するという科学のアプローチの基本から、進化論の様々な派生と最新の研究、各サルの分類と特徴などを学びました。Distributional requirementを満たすためにScienceに分類される授業をあと一つ履修する必要があったため受講しましたが、文系科目とは違うようで似ているアプローチの仕方、考え方もあり面白かったです。ニューヨークのブルックリン動物園へのクラストリップがあったり、毎回授業開始5分間は教授主導の瞑想の時間だったり、面白い授業でした。

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伝統の一戦 Yale X Harvard

日本でいう早慶戦のように、アメリカにもライバル校による伝統の一戦というものがあります。イェールはハーバードが永遠のライバルです。そしてここはアメリカ、戦うのはアメリカンフットボールです。毎年11月にイェール、ハーバードの会場(大学がアメフト場を所有しています)を交互に使用して行われるこの伝統の一戦、今まではあまり興味なく行っていませんでしたが、今年はもう最後の機会でありちょうどイェールの会場で行われるということで、行ってきました!

イェールの学生だけでなく、ハーバードからも多くの学生が応援しに、さらには両大学のOBOGも多く観戦に訪れます。チアやブラスバンドもいて盛り上がります。席は自由なので、かなり前の方で観ることができました。
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詳細なルールはよくわかりませんが、少しずつ前進し、一番端のゾーンにトライすると点が入ります。前半終了時点では20点差くらいでイェールが負けている状況でした。あ〜という感じでハーフタイムになり、ピザを買いに行って戻ってくると…
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ピッチに座り込み、警察に取り囲まれている人々がいます。

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Yale流自己分析の方法

大学卒業後の進路を考える上で、自己分析は大事だとよく言います。就活においても、自己分析をしましょうとよく本やネットに書いてありますね。その一方、具体的にどのように自己分析をすれば良いのかというのはなかなかよくわかりません。僕の場合、3年生の頃自分の興味や将来やりたいことを見失ってしまっている時期があり、自己分析をするのが良いのだろうと思いながらもその方法がよくわからず彷徨っていました。そのような状態から脱するきっかけとなったのが、Yaleで開催されていたセミナーでした。これは授業とは違い、学生のイノベーションや社会奉仕活動を支援するために設立された大学の機関が開催していたもので、「社会のために何かしたいけど何をどうすれば良いのかわからない人」に向けられたものでした。このセミナーで教わった自己分析の方法により、自分の核となっている部分を言語化でき、その後卒論のテーマを思いついたり就活をしたりする上でとても役立ったので、今回はそんなYale流自己分析の方法について書いてみたいと思います。

とはいっても、やることはかなりシンプルで、以下に挙げるいくつかの問いに対する答えを考え、書き出すのみです。

1. 自分が不正義(injustice)を経験したり、感じたり、目撃したりしたのはいつか?その経験において何が自分を感情的にさせたか?
「不正義」は不公平だと思ったこと、ずるいと思ったこと、自分の定義で構いませんし、その内容も身の回りの小さなことでも、世界的なことでも、小説やドラマ上のことでも大丈夫です。自分の人生を振り返り、思いついたことを列挙していき、それぞれについて何故自分はそれを不正義だと思ったのかも考え書きます。例えば、僕の場合すぐに思いつくのは「ウルトラマンで友好的な宇宙人が人間から迫害され死んでしまった時」等ですが、じっくり考えると他にもYaleで会った人が言っていたこと、授業で思ったこと、自分自身が経験したこと等色々とあります。

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卒業論文の書き方

4年生ということで、専攻を修了するためには卒業論文を3月までに提出する必要があります。僕の専攻、Ethnicity, Race, and Migrationではいくつかオプションがあり、卒論を書かないオプションもあるのですが、僕は「一年かけて卒論を書く」という選択をしました。今年の夏にタイと日本にて行ったフィールドワーク、インタビューを元に、最終的には45-60ページの論文を書きます。秋学期には「卒業論文の書き方」というようなセミナーが僕の専攻の授業でオファーされており、今はその授業の中でどのような手順で研究を形にし、執筆していくかということを学びながら実際に書き始めています。予定としては今学期中にLiterature Review (先行研究の分析)のパートを書き終わり、来学期残りの部分を書くという感じです。今回は、卒業論文をどう書いていくのか、そのプロセスについて紹介したいと思います。

それでは、フィールドワークなど、データを集める研究パートを既に行ったとして、それを論文にする作業を順番に見ていきましょう。
1. 研究のテーマ、疑問、重要性を明確にする

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国に属さない人々その名はゾミア

私たちは皆国に属しています。最近も芸能人の脱税が発覚して話題になっていますが、脱税が問題になるのはそれが国民としての義務だから、つまり我々が国に属しているからです。今の世界は国家の集合で成り立っています。日本、アメリカ、イギリスといった国家により、陸地には全て国境が引かれ、国家でない陸地は南極を除いて存在しないように思います。しかし!東南アジアには国に属さない地域、ゾミアと呼ばれる場所があるのです。近現代の国民国家制により、国に属せない難民のような存在も生まれてしまっている訳ですが、一方でゾミアには自ら国に属さないことを選ぶ人々がいるのです(という主張をしている教授がイエールにいます)。国ではない陸地とはどういう意味でしょうか。国に属さないとはどういうことでしょうか。先日の東南アジアのセミナーで議論したことを書いてみたいと思います。

James Scottというイエール大学の教授は、東南アジアは元来高地・山地に住む人と平地に住む人に分かれてきたと主張します。近代的な国家の成立以前から、国家が成立するのは平地であり、常にどの国家にも属さない高地が存在してきました。それがゾミアと呼ばれる地域です。
↓ゾミアを示した地図。東南アジアの広範囲に広がっています。
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山に住む種族というと、何となく野蛮で近代化していないというイメージがあるのではないでしょうか。映画でも、よく山の民に助けを求めに行くというようなシーンがありますが、だいたい近代種族との関わりは薄く、暴力的で凶暴で力がすごいけどあまり技術は発展していなく頭も悪いというような描かれ方をしますよね。
↓映画『キングダム』に登場する山民族。高度な技術を持っている設定ですが、見た目や戦い方などは上記と一致しています。

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しかし、スコット教授はこれは平地で発達した国家が作り出した幻影であり、実際は「山の民」は「近代国家の繁栄から取り残された民族」ではなく、平地と高地の間には昔から人・物・文化の交流があり、両者には密接な関係があるのだと主張します。

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